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■「プロジェクト志向でいこう!」(30)   2008年6月執筆

                   若槻 徹(島根県)
                 waka@bs.kkm.ne.jp    

◆デビュー戦

いよいよ私の“指導主事”としてのデビュー戦がありました。

○○主任研修で「ケータイ(インターネット)トラブルの予防と対応」というテーマで講義をすることになりました。

県内5地区で30人〜120人くらいの小・中・高校の先生を相手にお話をすることになりました。県内の全部の学校の先生(代表の○○主任や○○主事、○○部長)が対象です。時間は50分。しかも一日がかりの研修の最後の時間帯。会場にインターネット環境はなし。

これまでは、講義を聴く方でしたが、参加者の意欲を引き出し、飽きさせない講義というのは、正直あまり体験したことがありませんでした。一方的に話をするというタイプの講義が多かったです。参加者の方も、自ら進んで・・・という感じじゃなくて、立場上仕方なく・・・というのが本音でしょう。最近は、それでも途中で演習を入れたりして、参加者の意欲が持続するような工夫ができる方もいらっしゃいますが・・・。

いざ、自分がその立場になってみると、なかなか大変だなと思いました。

(伝えたいことがたくさんあるのに、時間がない・・・。)最初はそう思いました。

そして、今回、5回の講義の経験を通して、気づいたことがあります。

○知識を伝えるのが大切ではなく、やる気を引き出すこと、心を動かすことが大切だ!(プレゼンの極意)

○参加者のニーズや実情に応じて内容を工夫すべし!

○ねらいをシャープにしぼって、内容は少なく!

こういう思いを得るには、私自身、時間がかかりました。


そして、達した結論は・・・


そうだ!これまで子どもたちを相手にずっと行っていた“授業”を大人相手にすればいいんだと気づきました。


◆プレゼン“授業”の実況

作成したプレゼンの「ノート」(説明メモ)の部分をもとに再構成してみます。
(うまく文章になっていませんが・・・雰囲気は伝わるでしょうか?)

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 携帯電話やインターネットによるトラブルが子どもたちの間で急増しています。今回は、その予防と対応について、考えてみましょう。

 インターネットは、悪いものでしょうか?・・・子どもたちにとって必要のないものではありません。インターネットやケータイがこの世からなくなるとは思えません。子どもたちが大人になって生きていく上で必要な道具なのです。

 例えば、「果物ナイフ」。使い方によっては、人を傷つける道具にもなります。
危ないからといって、子どもの時には使わせないでおけば、将来リンゴはうまくむけないでしょう。包丁なら料理もできないでしょう。つまり、危ないからといって、子どもたちから遠ざけることだけでは問題の解決にはならないのです。

 学校裏サイトに、子どもたちが誹謗中傷を書き込まれたらどうしますか?書き込んでいたらどうしますか?今回は、ネットいじめなどケータイやインターネットのトラブルについて、学習してもらい、終わったら、その予防に明日から取り組もう!と思ってもらうのが、この研修のねらいです。


これから、「現状」「出会い系サイト」「ネットいじめ」「ケータイ依存」の問題点を考えてみましょう。そして、「トラブルを予防するには」「トラブルが起きたら」という対応についても考えてみましょう。

 全国の調査では、小学生3割、中学生5割、高校生9割がケータイを持っているというデータが出ています。(中学生は、6割とも言われています。)

 いつごろケータイを持ち始めるかというと、中学校卒業前後が最も多いです。
つまり、指導の重点をおくとしたら、中学校は3年生3学期。高校生は1年生の入学後の早い内がいいタイミングになりそうです。

 ところで、中高生は、通話ではなく、ケータイのメールに多くの時間をかけている現状があります。それは島根県でも同じです、ケータイをたくさん使っているのは、都会も田舎も同じ状況なのです。田舎だから安心ということは言えません。

 では、ケータイによるトラブルについて考えていきましょう。出会い系サイトに関わる事件の全体の85%の1100人が18歳未満です。そして、出会い系サイトへは、ケータイでのアクセスがほとんどで、女子中高生に被害が集中しています。県内の出会い系サイト関連の事件は、昨年度14件、5名でした。

 次は、学校裏サイトなどの深刻化するネットいじめの問題です。文科省の最近の実態調査の結果では38000の裏サイトが報告されています。その多くが、掲示板での書き込み、スレッドと呼ばれるものです。内容は何でもありの無法地帯です。ネットいじめにあっている子どもたちは、兵庫県の調査では、30人学級なら小学校で1人。中学校で2人。高校だと3人の割合になります。

 今、中高校生には人気なのは、モバゲーと言われるサイト。ゲームだけでなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス) のサービスもあって、交流サイトとなって、学校裏サイト化している面もあるそうです。モバゲーも今や1000万人を超えるユーザー数です。

 一方、ケータイ依存の問題も深刻化しつつあります。アンケート調査では、半数以上の子どもたちが、メールの返事を10分以内にしなくては・・・と思っています。子どもたちの間では「3分ルール」というものあり、片時もケータイを手放せない子どもたちは少なくありません。

 では、ケータイやインターネットのトラブルにあわないためにどうすればよいか考えていきましょう。

 ケータイのフィルタリングが現在進められています。契約時に今までオプションだったのが、標準装備になったという訳です。しかし、モバゲーや掲示板が使えないので、親に頼んで解約ということもケースも多いそうです。

 一番大切なことは、フィルタリングだけでなく、有害サイトに負けないように子どもたち自身を強くすること、正しい判断力を身に付けることなのです。それが、「情報モラル教育」です。

 情報モラル教育の指導のポイントは、1回だけでなく、いろいろな教科の中で、繰り返して指導することです。

 文科省の教員のICT指導能力調査の「情報モラル」の島根県の実情は・・・下位の方です!40位代の成績です。このままでいいのでしょうか。

 さて、いよいよどうやって取り組むかということを考えていきましょう。生徒指導主任・主事の先生を中心に、全校体制で取り組むための作戦を考えましょう。

 まず、やや関心の少ない先生たちにその気になってもらうには、危機意識をもたせることが大切。実際に学校の子どもたちがどんな実態なのか調べてみるといいでしょう。

 そして、一人で、旗を振ってもなかなか大変です。チームで取り組みましょう。
校長・教頭研修会でもケータイの問題について、リーダーシップを発揮して取り組むようにお話ししています!管理職を含め、仲間を作って、始めましょう!全校で取り組むことの大切さを理解して、温度差がでないように、責任を持ってきちんと取り組むもう!という意識をもってもらうことが大切です。

 具体的にこうしたらいいという資料がネット上にたくさんあります。詳しい人がいない時には、専門家にたのむ方法もあります。

 指導のポイントは
・書き込んだ人が分かることを子どもたちに教えてやってください。
・先生向けの授業の進め方がビデオで紹介されているのでそれを参考にするといいことを伝えましょう。
・ケータイやインターネットを悪いことに使う大人もいることを教えてください。

 実際にトラブルのあったときの対応の仕方を知っていくことが子どもちには必要です。特に高校など校則に規定されていることについては、入学時に生徒や保護者にきちんと伝えておく必要があります。

 以上のように、未然防止が大切。そのために全校での情報モラル教育が大切です。

 でも、もし、トラブルが起きたらどうするか、これを最後に考えていきましょう。実は早期発見が難しいのがネットやケータイのトラブルです。相手がわからないことが多いからです。だからこそ、日頃から児童生徒が悩みを気軽に相談できるような環境をつくっておくことが大切です。そして、すばやく対応する。家庭と連携してというのがポイントです。

 書き込みのトラブルが起こった場合の対応方法を理解し、学校裏サイトの書き込みの削除方法を知っておいて下さい。すぐに削除してもらえない場合は、プロバイダーへ削除依頼したり、警察に相談しましょう。

 また、他人を装う「なりすましメール」がトラブルをうむこともあります。チェーンメールは、無視することが大切です。絶対に送らないことです。どうしても不安な人は、チェーンメールの送り先を教えてあげて下さい。

 さあ、明日から情報モラル教育にすぐに取り組むこと。それが大切です!
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 人に思いを伝え、心を動かすのはそう簡単ではないことが今回経験できました。でも、ひょっとしたら、今回の研修を通して、島根県の情報モラル教育がほんの少しでも進むことができたかも・・・。

 私の現在の職務は、情報教育推進の役割ではないのですが、(その役目を果たすべき人は他にいるのですが)私がやっちゃうよ!今、そんな意気込みです。

 
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